旅することで自己を知る -3ページ目

1/28 モンサンミッシェル―流砂の中の修道院

 二日目は、天空の城ラピュタのモデルとなっているモンサンミッシェルの修道院を目指した。モンサンミッシェルはパリから約50kmの辺境の地にある。ここにいくと移動だけで半日費やしてしまう。また、修道院以外の名所もない。しかし、私たちにはラピュタをみないという選択肢がなかった。

 モンサンミッシェルに行くためには、パリ・モンパルナス8:05発レンヌ10:20着TGV(新幹線)に乗らなければならなかった。そうしなければ、レンヌから修道院へのバスに乗れないかもしれないからだ。しかし、私たちは寝坊した。8:05に間に合わなかった。バスは11:30で、次は16:00とか。11:30にのらないと日帰りは不可能。間に合うかはわからない。しかし、いちかばちかという気持ちで9:05発の列車に乗る。そのとき、頼りない雰囲気の日本人を見つけた。学生の一人旅か。行き先は私たちと同様に修道院らしい。駅員に対し日本語交じりのジェスチャーを試みている。旅は道ずれ、レンヌから一緒に行くことにした。
 その人は、20歳の記念に一人旅をしているとのことだった。私と同じだった。もっとも私の場合はニ人旅だが。タメということで仲良くなる。

 モンサンミッシェルには無事到着できた。荘厳な佇まいにため息が出る。修道院に着くと、見渡す景観が素晴らしい。
 モンサンミッシェルは、流砂の中にある。
 砂が流れていく様が本当に神秘的だった。潮が満ちるとここはまさに「天空の城」のようになるらしい。ちなみに、このあたりでは「天空のエルサレム」というらしかった。
 修道院の中に入ると、やはりラピュタのようだった。観光客もほとんどおらず、ひっそりとしていた。中庭はまさにラピュタの空中庭園。瑞々しい緑と白い蝶々の姿は息を飲む美しさだった。しかし、ここは「城」ではない。あくまで修道院であり、礼拝堂がたくさんあった。本家は、砂に守られた祈りの空間だった。
 修道院にすっかり魅せられた私たちは、帰りのTGVを遅らせた。レンヌ19:05発、パリ・モンパルナス21:15着。

 モンパルナスでは、firemanのフランス人に声をかけられた。女の子が夜遅くにぶらぶらしていてはいけないとのこと。びっくりしたが、いい人だった。シャンゼリゼ駅で別れる。別れ際に握手をした。
 日本人の学生とは、明日一緒にヴェルサイユに行く約束をしたけれど、曖昧なかたちで別れることとなり、それきりとなった。旅はいろんな人との出会う一方で、別れを経験する場でもある。出会いと別れが短いスパンでやってきて、それはさながら人生の縮図のようである。

1/27 パリ・市内観光

 パリに着て一日目、まずはパリを知ろうということで、私たちは市内観光をした。ピカソ美術館やシャンゼリゼなどに行く。凱旋門、エッフェル塔も基本ということで見に行く。ただし、ライトアップされる時間に行った。エッフェル塔はベタすぎるが、やはり感動するものがあった。観光の初日はまずまず好調。ただし、時間の関係でルーヴルに行けなかったのが残念だった。

1/26  旅のはじまり

 旅行は、その日の宿探しから始まった。11:00に成田を出発し、19:35にパリに到着した。非常に長い時間のフライトであり、正直なところ、私たちはぐったりしていた。しかし、そんなことは言っていられなかった。その日の宿が決まっていなかったのである。本当は初日の宿くらい決めておきたかったのだが、成田を出発する直前に予約していた宿からキャンセルを申し渡されたのだった。
 入国などの諸手続きを済ました頃には、20時を回っていた。しかも、当然だが、電話するとフランス語で対応される。私にとってフランス語は未知の言語であり、正直困った。しかし、行動しなくては始まらない。20:30、旅の会話集を参考にしてなんとか予約を取る。胸を撫で下ろす瞬間だった。バスティーユの近くで13ユーロ。なかなかいい宿である。その後も二三あり、宿についたのは22:00頃だった。このように、私たちの旅は慌しく始まった。

ヨーロッパ周遊旅行

 以下につづる日記は、私が大学二年生のときに友人と二人で出かけたヨーロッパ周遊旅行についての記録である。パリからブリュッセル、ケルン、ベルリン、フッセン、ブダペスト、ウィーン、ローマ、フィレンツェ、そしてパリ。二週間という短い時間だったが、私にとっても友人にとってもはじめての本格的な海外自由旅行だった。
 
 自由旅行をはじめたのは、高校一年の頃に遡る。姉の旅行に便乗して、ロサンゼルスに出かけた。はじめて一人で飛行機に乗った。そこで、私は自由旅行者に出会った。白いTシャツにジーンズ、スニーカー。背中には大きなバックパック。格安宿に泊まっては、そこでのふれあいを大事にする。こじゃれたレストランには行けない。でも、そんな彼らのスタイルに私は心底ほれ込んでしまった。そして、決意した、私も自由旅行をしてみよう、と。

 その後、大学生になって、私は入学早々自由旅行に行くことにした。韓国だった。一週間という短い旅行ではあったが、似て非なる歴史・文化を実感し、感動を覚えた反面、カルチャーショックをも覚えた。そして、中国、マカオ、タイと少しずつ旅行を重ねていき、だんだん旅行に慣れてきた大学二年の春、私は本格的に国境を越える旅行をはじめてした。

 それが、これからお話するヨーロッパ周遊旅行である。