2/2 ブダペスト | 旅することで自己を知る

2/2 ブダペスト

 ミュンヘンから夜行でブタペストへ。旅も中盤である。

 道中、フッセンで購入したルートヴィッヒやその従妹シシイ(いわゆる皇妃エリザベートのこと。ヨーロッパではこの名称で親しまれている)に関する本を読みふけった。それらを読み終え、睡眠をとると、そこはもうハンガリーだった。

 ハンガリー訪問の目的は、①温泉に入ること、②シシイの軌跡を辿ることであった。前者については、急務だった(笑)。というのは、それまで、夜行列車での移動続きでろくにお風呂に入っていなかった。世界随一の温泉をこうした消極的な理由から志向するのは何だが、私たちはとにかくお風呂に入りたいと思っていた。後者については、昔演劇部に入っていたときに「エリザベート」を上演したことがあり、思い出深かったのと、個人的に彼女の生き方に共感するところがあったので、東欧にきたら訪問してみたいと思っていた。

 ブダペストは、全体的にひなびた印象を受ける。メトロは3つしか通っていない。補足的にトロリーのようなものが通っている。いずれも小さく、かわいらしい。言語は、独特のマジャール語のみを用いている。旅の会話集にも載っていない言語。当然、まったくわからない。通貨は「フォリント」、ユーロが使えない。ここにきて、初めての両替をする。チェンジでは、言葉が通じず不安になるもなんとか両替を終えた。

 さて、通貨を得ると、まず私たちはセーチェニ温泉に向かった。セーチェニ温泉は、意外にもすばらしかった。先に述べたように、ブダペストにはひなびた印象があり、温泉もそんな感じだろうと予想していた。しかし!温泉はアールヌーボー調の宮殿のような建物の中にあり、さながら高級ホテルのプライベートプールといった印象であった。外観はやはりひなびていたが、中に入ると宮殿クラスの格調高さがある。驚いた。温泉は本当にプールのようで、水着を着て入る。さらに驚いたのは、プールの中にチェスボードがあり、ご婦人や紳士が指していたことである。オツである。値段も、日本円にして700円。東京にこんな温泉があったら月一くらいで行っちゃいそう♪

 セーチェニ温泉の周りには、他にも見所がたくさんあった。美術館を巡ったり、スケートしたり、熟年旅行にでかけるならここかな、と思った。

 その後は、第二の目的を果たすべくマーシャチュー教会に行った。ハプスブルグ家の菩提寺であり、シシイがオーストリア皇妃になったときの戴冠式も行われた教会である。ここは、残念ながら外観のみ。もうすでに時間が遅かった。もう少し早く行けばよかったと残念に思った。しかし、この時間に来たことはある意味でラッキーだった。ドナウのバラと呼ばれる夜景に遭遇できたのである。漁夫の砦から一望したドナウ川、そしてドナウのバラは本当に優雅だった。シシイがここを愛した理由がわかった。はじめてブダペストの真価を知った気がした。これをみるためだけにヨーロッパにいくのも悪くない、そう思えるほどの美しさに私たちはうっとりした。